コシヒカリ系品種に駆逐されたササニシキは和食との相性抜群で主食として飽きの来ないお米
消えたササニシキ
普段何気なく食べているお米ですが、そのほぼ全てにコシヒカリの遺伝子が入っています。
作付けランキングではコシヒカリがぶっちぎりの1位で2位ひとめぼれ・3位ヒノヒカリ・4位あきたこまち・5位ななつぼしと続きます。
一昔前にはササニシキという品種がそれなりのシェアを誇り普通に売られていましたが、今では見る影もありません。
味的にはコシヒカリに引けを取らない美味しさですが、冷害に弱く1993年の大冷害で壊滅的な被害を受けて作付面積が大幅に減少しました。
さらにササニシキの親にあたるササシグレもササニシキを凌ぐ美味しさを持ちながらも、いもち病に弱く現在では一部の農家が栽培する希少種となりました。
市場に出回っている食べ物は美味しさを最優先した品種ではなく、病気に強かったり作りやすさや日持ちの良さなど様々な要素で優れている品種が多くを占めています。
お米のもちもち感や粘り気の強さはでんぷん成分であるアミロースとアミロペクチンの割合で決まり、アミロペクチンが多いほどもち米に近くなります。
もち米はアミロペクチン100%なので、お餅やおこわなどにして食べられています。
タイ米は反対にアミロースで構成されているのでパサパサした食感でピラフなどに向きます。
うるち米はアミロースとアミロペクチンがおよそ2:8くらいで、コシヒカリはその中でもアミロペクチンを多く含みもち米寄りの品種です。
ササニシキはコシヒカリとは別系統なので、アミロペクチンの割合が少なく甘さ控えめでサラッとした食感です。
ご飯が主張せず他のおかずを引き立てる脇役に徹することができるので、和食のような繊細な味付けの邪魔をしません。
また冷めても美味しいので寿司やおにぎりに使うお米としてはコシヒカリより適しています。
毎日食べる主食としても飽きの来ない味なので、昔ながらのお米が好きならササニシキやササシグレをおすすめします。
毎日がご馳走
お餅はお正月に食べるイメージが強くハレの日の食材として受け継がれてきました。
日本には“ハレ"と"ケ"の概念があり、ケの日が日常生活のほとんどを占めるのでハレの日のご馳走がより際立ちます。
コシヒカリはお米自体の美味しさを追求したことでもち米の要素が強まり、ハレの食材との区別があいまいになりました。
現代の食生活は毎日のようにハレの日で、そうした食生活は自身の体に跳ね返ってきます。
ササニシキはたくさん食べても胃もたれしずらく、アトピーやアレルギー持ちの人でも食べやすいです。
米アレルギーなんて症状もありますが、そうした症状も低アミロースの方が引き起こされやすいそうです。
ハレとケは人が健康的に過ごすために自然と身に着けた知恵のひとつなのかもしれません。
テレビでは朝から晩までグルメ番組がない日はありませんが、ご馳走はたまに食べるからご馳走なのであり、ケの日の食生活こそが大切なのです。
失われた多様性
長期的に考えるとコシヒカリ系統に偏りすぎるのは危険ではないかと思います。
もしコシヒカリ系統が弱い伝染病が蔓延したりすると、途端に日本の米生産が壊滅的な被害を受けます。
農家が食っていくために育てるのが簡単で味もそこそこ良い品種ばかりに人気が集中するのは仕方ありませんが、多様性が失われるリスクも無視できません。
コシヒカリは欠点がないというのが欠点で、60年以上の長きに渡り天下を取り続けたことで完全に依存するようになりました。
コシヒカリ系統というだけで箔が付き、例え他系統で優秀な品種があっても見向きもされない環境ならば改善しなくてはいけません。
日本人の舌も甘くてもちもちした粘り気のある食感を好むようになり、これはお米だけでなく他の食材にも見られます。
飽食の時代には食欲を満たすためより刺激的な味付けになるので、ご飯が主張しても気にならないバランスとなります。
今後もしポストコシヒカリが生まれるとすれば、コシヒカリの影響下にないササニシキや他系統から出てほしいです。
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