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ミッフィー誕生60周年 作者ディック・ブルーナが描くシンプルで強いメッセージ

2018年11月21日

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Image by キナリノ

いつも変わらぬ存在

オランダのグラフィックデザイナー・絵本作家であるディック・ブルーナが生みだしたミッフィーは今や世界中で子供から大人まで愛される存在となりました。

オランダ語の名前がナインチェ・プラウス、英語でミッフィー、そして日本語ではうさこちゃんとして親しまれています。


ちいさなうさこちゃん

シンプルだけど色鮮やかな色彩と可愛らしいキャラクターはなぜこれほどまでに人の心を引きつけるのでしょうか?

震えて波打つような独特の線

ミッフィーの輪郭を形成するハッキリとした黒い線はよく見ると小刻みに波打っています。これが独特のタッチで人工的ではないどこか暖かみを感じる要因になっています。

最小限の配色

ミッフィーが暮らす世界には8色しかありません。ブルーナ・カラーと呼ばれるこれらの色にはちゃんと意味があります。

朱色に近い赤は幸せ喜びを表現する時によく使われます。

黄色は明るさ安心を表現する色です。

緑は自然安定を表現する色で特に野外で多く使われます。

青は静けさ安らぎに使われる色で空や海から夜まで幅広く使われています。

○ 白はミッフィーの体色で最も基本的な色です。色鮮やかな配色の中にある無彩色の白は逆に目を引きます。

当初の基本カラーはこの5色で後から付け加えられた色もあります。

茶色は落ち着きを表す色でこいぬのスナッフィーや木材の表現に使われています。

灰色はゾウの体色などを表現する時にどうしても必要だったのでしょう。

オレンジはなんとニンジン専用の色だそうですレアですね。

常にカメラ目線

ミッフィーを含め登場するキャラクターは常に正面を向いているか後ろ姿のどちらかです。これには理由があっていつもキャラクターたちは本を読むあなたのことを見ているという愛情が込められています。

常に無表情

ミッフィーの喜怒哀楽の表情を見た人はいないでしょう。どんなときでも表情を変えずに読者のあなたと顔を合わせて訴えかけてきます。

漫画やアニメのキャラクターでこれでもかと感情を押しつけてくるキャラクターがいますが、見る年齢やその時の心のバランスによっては不快に思うことがあります。

しかしミッフィーの絵本にはそれがありません。誰が読んでもフラットに自分が思うミッフィー像を作り上げて楽しむことが出来ます。

よく日本社会は愛想笑いや作り笑いなど礼儀やマナーとして本心とは違う感情を表に出すことをよしとする傾向があります。

外国人からすると笑うべきでない所で笑う日本人は何を考えているのか解りにくいと感じているようです。

もちろんそれが悪いことばかりではなく接客など気持ちよいサービスに繋がったり円滑に事を進める効果があります。

しかしそれを無理に続けている人はストレスに感じたり上辺だけの人間関係に疲れ切ってしまう場合も少なくありません。

そんな時こそミッフィーの絵本を読むと感情の押しつけが無くいつも同じ顔で迎え入れてくれる懐の深さを感じます。

これこそがストレートな感情表現の苦手な日本人にも好まれている理由でしょう。

なぜ日本人はよく笑うのか?日本人と外国人の”笑顔”の違い

デ・ステイルの影響を受けたグラフィック

ミッフィーの無駄を削ぎ落としたグラフィックはオランダの芸術活動デ・ステイルの影響を強く受けていると思います。

デ・ステイルの主要メンバーであるピエト・モンドリアンのシンプルな強い黒い枠線に鮮やかな原色という作風がミッフィーにも活かされています。

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模倣と創造

日本でも絵本作家の五味太郎やグラフィックデザインなどを手がける佐藤可士和などブルーナに影響された人物が数多くいます。

サンリオのハローキティに登場するキャラクターがミッフィーのパクリではないかと裁判沙汰にまでなりましたが、初代デザイナーの清水侑子は少なからずブルーナの影響を受けていると思います。

ハローキティもまた無表情カメラ目線シンプルな線と色などミッフィーが抑えているポイントをしっかりと抑えて生み出されたキャラクターなので似ているのも当然です。

最近はデザイナーも代わりミッフィーにはないピンク色が使われていたり、表情も豊かでコミカルなキャラクターへと変化しました。

よくも悪くもミッフィーとはかけ離れてしまったので、ミッフィーの変わらぬ佇まいがより際立つ結果となりました。

どの作家も何かしらのルーツ影響を受けながら創作しているので、完全なオリジナルは存在しないと言ってよいでしょう。

デザインはシンプルであることが一番大事。
完璧であるだけでなく、できるだけシンプルを心がける。
そうすれば見る人がいっぱい想像できるのです。
これがわたしの哲学。

ディック・ブルーナのデザイン (とんぼの本)

絶対に絶対に描きすぎてはいけない、複雑にしすぎてはいけない。
そして、僕の作るものはシンプルでいて、見る人にイマジネーションを働かせるものでなくてはならない。

ディック・ブルーナのデザイン (とんぼの本)


ディック・ブルーナのデザイン (とんぼの本)

創作風景

ミッフィーは永久に生き続ける

ブルーナは高齢で体力的な問題もあり、2014年の7月をもって創作活動を停止し引退しましたが、ミッフィーをはじめブルーナが創作してきたキャラクターたちはこれからも世界中で人の心に訴えかける活動を続けていくことでしょう。

描きすぎない、感情を押しつけない、読者の想像をかき立て見る度に違う印象を持つことで、自分自身が常に変化しているのだという本質に気づかされます。

(・×・)


MOE 2015年 05 月号 [雑誌]

ミニマリズム

Posted by Coro