MA-1はオシャレ?ダサい?フライトジャケットの起源や90年代リバイバルから考察する
Photo by king_kobra_jewelry
定番化か?流行過渡期か?
2016年において街を歩けば至る所で見かけるMA-1フライトジャケットですが、2012年末にトレンド系雑誌のポータルサイトが取り上げている記事を見つけました。
12月の原宿トレンドは「白タイツ」「MA-1」「ラフトレンチ」 – 日経トレンディネット(掲載終了)
この記事を書いているのが2016年のもうすぐ末なので、4年ほどMA-1ブームが継続していることになります。
4年という歳月を経てもはや定番化したのかもしれませんが、一昔前はミリタリーオタクやおじさんが好んできていた程度で決してオシャレアイテムではありませんでした。
いまやファストファッションのお店でも吊るされている状態なので、流行というものはこうもイメージを変えてしまうのかと驚くばかりです。
GUのMA-1風のミリタリージャケットくらいになると3000円を切る商品があるので、お金のない学生でも手の届く価格設定で爆発的に普及しました。
MA-1自体ををよく知らない中高年の人が何となく中綿が入って温かそうだからと買って帰ることもあるでしょう。
流行が末端まで行き渡る頃にはすでに流行は終わりつつあるという考え方もあるそうですが、MA-1に関しては果たしていつまで続くでしょうか。
ファッションはおよそ20年周期で繰り返すと言われており、2010年代における2世代前の1990年代が再評価される雰囲気があります。
90年代に流行っていたのがまさにMA-1で、米軍放出品のヘビーなものを着こなす若者たちがいました。
映画でも1994年『レオン』でヒロインの少女マチルダ役を演じた当時まだ子役のナタリー・ポートマンがダボダボのMA-1を可愛く着こなしていたり、1996年『トレインスポッティング』では主人公マーク・レントン役のユアン・マクレガーが着ていたりと印象的な使われ方をしています。
Photo by beatricemalevolti
オシャレ?ダサい?
MA-1はもともとは軍用のフライトジャケットで、起源であるフライトジャケットの大きな転換点がコクピット (操縦室)が密閉式になった事です。
コクピットから剥き出しで強風を浴びまくっていた頃はより防風や防寒を考えて重いジャッケットを着ていましたが、それが密閉式になったことで軽量化が図られました。
狭いコクピットのなかでもゴワつかないように着丈が短く、中綿をたっぷり詰め込んだ太めのシルエットは良くも悪くも癖があります。
MA-1が流行っているからと20年前のものを引っ張り出して着てみたけど、イマイチしっくり来ない原因はこの癖の強さが原因でしょう。
市販で売られているMA-1は現代的なシルエットで再構築されたもので、当時のMA-1とはまったく別物と考えたほうがよいです。
MA-1がオシャレなのかそれともダサいのか考えてみると、個人的にはやはり癖があるので着こなすのは難しいかなと思います。
まず防寒性についてですがMA-1は±10℃の環境での使用に耐えられる設計ですが、密閉式になって以降に作られたフライトジャケットなので、上空であっても無風のコクピット内に収まった状態での使用に最適化されているはずです。
もちろん表面は密度の高いナイロンなので防風性能にも優れていますが、他のフィールドジャケットのように地上で使うことを想定した服とは根本的に設計が違うということです。
これを街着として着た場合に何が起こるかというと、それほど寒くない時期から着るとたっぷり詰まった中綿で暑くなり、かといって真冬では着丈が短いのでお尻や腰まわりが冷えやすいという欠点があります。
これはあくまでたMA-1単品で見た場合なので重ね着などで調節はできますが、フライトジャケット特有の癖を理解していないと後悔します。
定番のM-65フィールドジャケットと比較すると、M-65はまず地上での使用を想定した作りであり、着脱可能なライナーによって秋から春の3シーズン対応、さらにお尻が半分から完全に隠れる着丈があります。
シルエットも軍用ジャケットとしては細身で後世のジャケットに多大なる影響を与えた完全無欠なデザインです。
フライトジャケットでもN-3Bなどは着丈も長くよほど防寒着として優れていると思うのですが、よく調べたらパイロットではなくおもに空軍基地の地上要員に支給されていたようです。
やはり上空と地上ではコンセプトから何からまったく別物として扱わなければなりません。
市販のMA-1の多くはシルエットを細身にしたことで中綿の量も減らしているでしょうから、実物ほど耐寒性はないのは明らかです。
なかにはロング丈のMA-1なる商品も登場して、そこまでしてMA-1を着なければいけないのかと突っ込みたくなります(笑)
あえて安価な市販品でトレンドを取り入れることは否定しませんし、ルーツを重んじるミリオタの人たちは一過性ブームなど気にせず毎年実物を着続けるでしょうし、それぞれの信念に基づいていればどう着ようが自由だと思います。
オシャレ着や防寒着として、さらにはミリタリージャケットまで絞っても他に選択肢が数多くあるので、もし何が何でもMA-1が着たいという確固たる信念がなければもっと選択の幅が広がるでしょう。
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