盆栽は一代にして成らず 無限の儀式を通じて次世代への継承や時間の大切さを学ぶ
山採りや市場から仕入れた樹木の若木を毎日手入れして少しずつ自分の理想とする姿へ変えていくのが盆栽の魅力です。
幼い頃から祖父が世話する盆栽と接してきたChiako Yamamotoさんは世界で初めて女性で盆栽の先生になった人です。
業として盆栽に関わるプロと趣味の愛好家では盆栽に対する向き合い方が異なるかもしれませんが、考え方などは学ぶべき点が多いです。
盆栽はいつしかBonsaiとして日本よりも海外からの注目度が高くなり、日本人よりも伝統ある盆栽の文化を理解している外国人が多いです。
日本での盆栽のイメージはお年寄りの老後の趣味という感じですが、実は老若男女問わず誰でも楽しめる趣味でありその性質を考えると早く始めるほど得をします。
樹木は基本的に若木から生涯かけて育てても人間のほうが先にくたばるほど長寿なので、一代で完成させるのではなく子や孫の代まで引き継がれるのが当たり前です。
アートといっしょで完成という概念はなく常に変化して世話する人の理想形へと近づけていくのでしょう。
わずかな土に根を張って何十年・何百年と生き続けるのだから強靭な生命力を実感します。
もちろん日々の水やりや植え替えなどを適切に行わないと弱って枯れてしまうので、どんなに名品と呼ばれる盆栽でも気を抜けないライブ感が魅力なのでしょう。
年老いてから世話し始めた盆栽はその樹木にとってはほんの一瞬の出来事に過ぎません。
なので始めるなら早ければ早いほど盆栽の真髄に触れることができるはずです。
盆栽と向き合う時間が増えれば増えるほど日々の時間を大切に過ごさねばという思いが強まるようです。
水草アクアリウムでは二酸化炭素を添加して肥料分を豊富に含んだソイルで一気に成長させ数ヶ月ほどで完成させますが、それに比べると盆栽は何年も先を見据えてじっくりと育てる根気強さが必要です。
次世代へ受け継がれるものに情熱を注ぐ行為は現代社会に不足している要素かもしれません。
目の前の利益や欲望を優先して将来につけを回したり、技術の継承を疎かにすると必ずどこかで破綻します。
盆栽はそうした次世代へ受け継いでいく精神を自然と身に付けることのできる高等な趣味だと言えます。
同様に何十年もメダカや金魚を累代飼育しているようなベテランアクアリストの方も相当カッコイイのは確かです。
八百万の神が住むとされる日本で、信仰の対象にもなる山に根付いた野生の樹木を持ち帰り鉢の中で自然の荒々しさや生命力を表現する生きた芸術。
海外にも素晴らしい庭園はありますが、一本の樹木や苔にまで美しさを見出す感性は日本人独特のものでした。
日本はあまり宗教観のないお国柄と思われがちですが、盆栽の世話も突き詰めると宗教的で無限の儀式を繰り返す行為だと言えます。
盆栽を通して過去の思い出や故人の記憶が呼び起こされ、慌ただしく過ぎ去っていく日々のメモリーとして存在し続けます。
永遠に未完成だけれど生涯に渡って理想の盆栽を追求することはきっと人生を豊かにしてくれるでしょう。
とはいっても日々世話をする時間がなかなか取れなかったり、保守的な愛好家の批判が多いのがいまだ老後の趣味に留まっているのが現実です。
いつか日本では完全に盆栽が廃れて海外から逆輸入される時代が訪れても決して不思議ではありません。
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