ジーアポットは濡らした陶器ポットの気化冷却を利用した紀元前から存在する非電化冷蔵庫
Photo by Outdoor Happens
家庭における消費電力量においてエアコン・照明・テレビなどと共に大きな割合を占めるのが冷蔵庫です。
現代人の冷蔵庫への依存度は高く、他は何とか我慢できても食品は問答無用で腐るので食生活を変化せざるを得ません。
太古の昔から人類は食料をなるべく長持ちさせるために貯蔵するための工夫をしてきました。
その中でも最も簡単で効果が期待できるのが気化冷却を利用する方法です。
紀元前の古代エジプト文明やインダス文明でもすでにこの貯蔵技術が存在しており、今でも通用するほど不変的な価値があります。
1990年代にナイジェリア北部でモハメド・バハ・アッバという人物がジーアポットと呼ばれる二重ポット式冷蔵装置を開発したそうです。
2つの陶器ポットの隙間に砂を詰めてそこへ水を浸透させ、上から湿らせた布を被せることで内部の温度を下げることができます。
気化冷却の効果を最大限に発揮させるには乾燥した空気が必要なので、日本のような高温多湿な環境とは一番相性が悪いです。
日本では食料を干物にしたり塩漬けや発行させて長期保存する技術が確立しましたが、その方が湿度に対して強かったからでしょう。
ナイジェリアの気候では通常2-3日しか鮮度が保てないトマトを20日以上貯蔵できるほど効果を発揮しており、女性が食料を確保するための負担が減り、学校の出席率が上がったそうです。
電力が必要なく水さえあれば簡単に冷やせるので、インフラの整っていない地域でも食品の長期保存が可能になりました。
日本でも実際にジーアポットを制作されている人がおり、市販の陶器鉢を使えば構造的には問題なく自作できそうです。
日本に住んでいればクーラーボックスに保冷剤を入れて冷やした方が断然効果ありますが、ジーアポットの成り立ちを見ればいかに恵まれた環境に住んでいるかわかります。
クーラーボックスも保冷剤が切れてしまえばただの箱なので、環境によってはジーアポットの方が冷えることがあるかもしれません。
日本はただでさえ冬には凍えるほど気温が下がるのに冷蔵庫の電源はつけっぱなしなわけで、それだけ無駄なエネルギーを消費しているなと思います。
理由としては冷蔵だけでなく冷凍もしているので、いくら冬といえど電源は切れない状況を作り出しています。
災害によって停電すれば立派な冷蔵庫も途端にただの箱へと変わり、人の手では腐敗が止められないので無力感を味わいます。
ジーアポットは電化製品への依存によって薄れていた食料保存の意識を呼び覚ましてくれます。
自宅の冷蔵庫なのにいつ買ったかわからない食品が出てくるのは、それだけ食べ物に対する関心が低いからです。
もし何かしらの事情で冷蔵庫がただの箱になってしまった時にはジーアポットの事を思い出してください。
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