バイオスフィア2 密閉空間に人工生態系を作り上げ人間を長期滞在させる実験が90年代に行われた
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完全に外部から遮断された密閉空間に人工的な生態系を作り出そうとする研究は昔から行われており、スペースコロニーや他の惑星へ移住する際に欠かすことのできない要素です。
バイオスフィア2は1991年にアリゾナ州の砂漠に2億ドルもの資金を投じて建設され、3エーカー (約12,000平方メートル) の土地に人工生態系を作り上げて科学者を長期滞在させる実験が行われた場所です。
熱帯雨林・海・湿地帯・サバンナといったバイオームを世界各地から持ち込んだ動植物で再現し、それを維持するための装置も併設されました。
バイオスフィア1は実験施設ではなく地球のことで、その縮小版としてバイオスフィア2と名付けられました。
当初は2年交替で科学者男女8名が長期滞在し100年間継続される予定でしたが、相次ぐトラブルにより2年間で実験が継続不可能となりました。
エコスフィアというNASAがスペースコロニーの実験用に開発したガラスの球体がありますが、ホロホロという小さなエビと藻や微生物が入った海水が入っています。
光を当てることでエビの餌となる藻が成長し、エビの排泄物は微生物が分解して藻の栄養となります。
片手で持てるほど小さな球体のなかに絶妙なバランスで生態系が築かれており、完全に独立した世界は非常に興味深いです。
ボトルアクアリウムなら素人でも擬似的なものを作れますが、完全密閉となると途端にハードルが高くなり、長期維持するが難しくなります。
小さなエビならまだしも人間や動物が生きていくにはさらに緻密なバランスが求められるでしょう。
Photo by Biosphere 2 study shows tropical forest resilience
実験が失敗した原因としては大気のバランスが計算通りに行かず、慢性的な酸素不足に陥り科学者を苦しめたこと。
二酸化炭素が建物のコンクリートに吸収され、大気のバランスが崩れてしまったこと。
農作物が思ったほど収穫できず、家畜も特殊な環境に対応できず大半が死んでしまい食糧不足に陥ったこと。
閉鎖空間での度重なるトラブルによりストレスが蓄積し、科学者達の情緒が不安定になったこと。
以上のようなトラブルが発生し実験を断念せざるを得なくなりました。
他にも外界では当たり前にあった風が内部では吹かず、それにより巨木がうまく育たず枯れてしまうといった想定外のことが起こりました。
バイオスフィア2の見本である地球は大きさこそ違えど、これだけ多くの生命を維持するだけの生態系が築かれていることに改めて感心します。
閉鎖空間とはいえ砂漠に建てられた施設なので、室温を適度に保つには冷却システムに頼らなくてはいけません。
地球よりも太陽との距離が遠い火星での生活を考えると、保温するシステムが必要になってきますし、何かトラブルが起きても外部に助けを求めることはできません。
バイオスフィア2の失敗はさんざん叩かれネタとしていじられましたが、現在でもアリゾナ大学が管理し見学ツアーが行われています。
また気候変動の研究者や生態学者にも室温や湿度を自由に操作でき、様々な理論を実験するには最適な空間として有効活用されています。
人間が去った後も植物は成長し続けており、当時よりもより鬱蒼とした熱帯雨林の姿を形成しています。
栄養失調になりながらわずかに収穫できる農作物の世話に一日の大半の時間を費やし、大量発生したダニや虫と格闘する地獄のような日々。
環境は違えどひと昔前の人類も余暇は少なく飢餓や野生動物に苦しめられてきた歴史があります。
生態系になるべく負荷をかけない生活をしようとすると、原始的な生活へ戻るのかもしれません。
生態系が小さな分だけ自分に反動が伝わる時間が短く、少しの気の緩みが生態系のバランスを崩してしまいます。
例え人工生態系を構築してもそれをコントロールするのは容易でなく、その中で暮らす以上は環境に抗うことはできません。
現時点では火星移住はおろか火星の地を踏んだことすらない状態ですが、いつの日か火星でも木々が生い茂り人や動物が暮らす風景を見ることができるのでしょうか。
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